日記2016年06月24日配信

プロゲーマー専門学校を視察していた頃の思い出

東京駅から大手町駅へ、そこから江戸川区の西葛西へ向かう。
もしも通学するなら遠いなあ、と思いながら東京メトロ東西線の西葛西駅に降り立つ。
「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」の体験入学イベントが目的だ。

鳴り物入りで世間を驚かせた、通称プロゲーマー専門学校。
噂を聞きつけた一年前、居てもたってもいられなくなり、私は現物を確かめることにした。
幸い、当時の自分は体験入学の条件を満たしていた。

西葛西駅の北口から、ワイズマートとセブンイレブンが見える通りを直進して、滋慶学園が運営する東京アニメ・声優専門学校へ到着。
「体験入学ですか?」
在校生に声を掛けられたので名前を告げると、エントリーシートが渡された。
個人情報の記入を済ませると、係の人にレコーディングスタジオへ案内される。

この辺りで、言い知れぬ高揚感に襲われた。
なんだろう、普段は感じ得ない種類の心の高鳴りだ。
全容が明らかにされていない専門学校、飛び交う噂、不安がる声。
謎に包まれた場所へ赴き、自ら疑問を解決せんとする行為に快感を覚える。
潜入って楽しい。


移動中は在校生とおしゃべり出来る良い機会だもんで、eスポーツ課の見学ですと伝えてみると、へぇーそうなんですかすごいですね、私なんにも知らなくて、と返ってきた。
まぁそんなものか。
業界初をアピールしたコースだし、在校生にも大して情報は伝わっていないんだろう。
なに、担当者から色々と聞き出してやる。


室内には自分と同じ体験入学生が着席しており、スタジオのモニターに映し出された学校PRの映像を眺めている。
しばらくすると案内役の男性が現れ(担当者は毎回同じ。顔を覚えられてしまった)、進路希望を聞いてきた。
各々の体験入学生が、一枚のシートを回しながら順番に記入する。

私は「eスポーツ課」で確定しているものの、少し悩む振りをして、手に持ったシートから他の参加者の希望を目にした。
声優、アニメクリエイター、イラストレーター……うーむ、eスポーツコースの志望は比較的少ないらしい。


各自の志望が分かった以降は、コース毎に異なった教室に割り振られる。
体験入学用の教室は北葛西の校舎にあるため、一同はアニメキャラクターがペイントされた車両(いわゆる痛車)に乗り込み、もう一つの校舎へと向かう。

メンバーは私を含め、eスポーツ課を志望する六人の体験入学生と、案内役の男性と、運転手。
顔つきや背丈から体験入学生は高校生だと思われ、参加者の一人はその生徒の保護者だった。
プロゲーマーを目指している子供と、情報を集めたい親御さんかな。


さて車内では、体験入学生はスマートフォンに視線をやったり、景色を眺めたりしている。
要するに無言である。
…………。
北葛西の校舎まで割と時間がある。
気の効く人なら何かしら話を振るのかもしれないが、あいにく寡黙な空気は苦にならない。
なので平時なら、自分も西葛西の風景を窓から楽しんでいるだろう。

しかし今日は違う。
助手席に座る案内役の男性に問う。

「あのー、プロゲーマーの養成って、指導する人は誰になるんですかねー」
「業界で有名な方をお招きしますので、実績のあるプロの方が指導してくれますよ」
「声優専門学校の中に、新しくeスポーツのコースができるって感じですかね」
「そうですね、海外で成長中のeスポーツが日本にも来る、ということで我が校でも……」

すなわち取材である。
会って間もない人と、密室空間で活発に話し掛けるような性格は持ち合わせてない。
にもかかわらず矢継ぎ早に雑談を仕掛けているのは、ひとえに強い関心からだ。

このプロゲーマー専門学校、信用に値するのか?
eスポーツ業界の発展に貢献してくれそうか?

ただそれを確かめたくて、西葛西にまでやってきた。
本当に探りたい事柄があれば、話題は尽きないものなんだなと、少々感心する。
不審がられない程度にいくつか質問していると、北葛西の校舎に到着した。
建物の壁面に描かれたアニメキャラクター、俗に言う萌えキャラが我々を迎え入れ、ここが東京アニメ・声優専門学校なのだと実感する。



教室に着いた後の流れは、毎回こうだ。
特別講師として招かれた現役のプロゲーマーや、eスポーツのアナウンサー、プロゲーミングチームの代表者などが講義をする。

アナウンサーならStanSmithさん。
プロゲーマーならCerosさん、BonziNさん、チョコブランカさん。
代表者ならLGraN(梅崎伸行)さん。

割かしレアなお話しを静聴した後、実践の講義に入る。
要はストリートファイターやLeague of Legendsで対戦するのだが、私は対戦が終了し次第、別の行動を取ることにした。


機材チェックである。
本気で未来のプロゲーマーを育成するつもりなら、練習環境をきっちり整えているはず。
体験入学生が個別の面談を受けているので、そこそこ自由に動ける時間が生まれる。
この間を利用して、室内をくまなく見まわした。

G710のキーボードに、G402のマウス、ヘッドセットはG430で……モニターの型番はProLite G82488HSUね。

などとやっていた。
プロゲーマーが使用している用具と品質面で劣らず、環境面はグッドだ。
十台置かれたデスクトップパソコンを覗いてみても、League of LegendsやDota2といった代表的なeスポーツタイトルは揃っている。



特別講義が完了するとエンディングが催される。
これがね、なんというかその。
メディアセンターというスペースの広い場所で、在校生によるパフォーマンスが披露されるのだ。

「アルミン俺、駆逐よりやりたいことができたんだ」
「え?」
「俺、声優になる!」
「何を言っているの?」
(ここで『紅蓮の弓矢』が流れる)
そして、テレビアニメ『銀魂』の映像をベースにした音声劇場が続く。
つまり声優コースの在校生によるMADだ。生アテレコだ。

一回目はいい。一回目は。
別の日にちで体験入学する際も、演目は一緒である。
生アテレコを二度三度聞くとなると、「今回は噛まないかな、大丈夫かな」といった心境でエンディングを過ごすしかない。


体験入学が終了し、西葛西駅前まで送ってもらう。

送迎車

西葛西の街をぶらぶらと歩き回った後、帰りの電車内でパンフレットと入学案内に目を通しながら帰宅。本日の調査終了、と。

それから一年が経ち、開校する2016年の四月は既に過ぎた。
引き続き、同校の行く末を追っていく所存だ。


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