プロゲーマー2015年06月04日配信

自分は強くない、広告塔だと語ったチョコブランカ

2015年05月31日、プロゲーマー専門学校の体験入学と特別講義が開かれた。

特別講義のスケジュールに、「プロゲーマーの葛藤」という項目が設けられている。
悩みを持つプロゲーマーの一人、Evil Genius所属のチョコブランカが講義を始めた。


教卓の隣に置かれたモニターに、チョコブランカが準備していたスライドが映し出される。
そのモニターに、Evil Geniusのももちと、同じくEvil Geniusに所属するPR Balrogのプロフィールが映る。



ももち
「強さ+選手として大会実績を残す」


PR Balrog
「強さ+アメリカで人気のプレイスタイル」



プロゲーマーの持ち味と役割が、プレゼンテーションのソフトに入力されていた。
そして、チョコブランカの紹介資料も映し出される。









チョコブランカ
「営業+広報」



そのモニターに「強さ」の文字はなかった。
チョコブランカ自ら製作したであろうスライドに、「強さ」を載せていなかった。



私は前日から気になっていました。

はたしてチョコさんは、プロゲーマーに関心を持つ生徒を前にして、どんな自己紹介をするのだろうか? と。


プロの腕前をアピールするのか、それとも包み隠さず実態を語るのか。
チョコさんの心情、立ち位置みたいなものを知りたくて、私は西葛西へ行ってました。





確かに、ウルトラストリートファイターIV競技者のチョコブランカは今、最前線で戦ってるイメージから遠いのかもしれない。


しかし闘会議2015の組手で、チョコブランカは次々に乱入するイベント参加者をなぎ倒していた。


さくら使いのギャリックを、ブランカ使いのひとちゃんを、ジュリ使いのぎしぎし君を、バイソン使いのQ太郎を、さくら使いの畠山を、エル・フォルテ使いのふくちゃんを、リュウ使いのユノを、全員倒していた。


ボンちゃんが残した22Winsを、途切れさせずにももちへ引き繋いだ。


TOPANGA闘会議特別マッチでも、うりょのディカープリから1ラウンド取り返し、「これは逆転ワンチャンあるのか?」と思わせる試合を展開していた。
実際、現地の幕張で見ていてそう思った。




しかしそれでも、格闘ゲーム界では足りないんだろう。
その不足は見る側だけでなく、プロ本人が自覚していました。




プロゲーマーとは何か?
定義のあやふやな"プロ"という言葉に悩む姿を、彼女は教室でさらけ出していた。




チョコブランカ
特に私が悩んでいるんですけれど。
なんで私がプロになれるんだろう、と思ったぐらいなので。
私はウメハラさんやももちみたいに、世界大会で優勝できるかって言われると…………強くないです。
私はそんな強くないですよ。





言った。
体験入学生の前で、はっきりと言った。
彼女は話を続ける。







チョコブランカ
なので、なんで私がプロに? って思った訳です。
オーナーさんに、「なんで私をオファーしてくれたんですか?」って聞いたんですよ。
真っ直ぐに。
そしたらオーナーさんは

「もちろんそれは知っている」
「知っているけれど、それ以上に君には価値があるから、プロになって欲しいと思ったんだよ」

って言われて……うん、そうなのか? って。
プロって言うと、強い人だと普通は思うと思うんですよ。
自分の中でそれは常に、自分は一体なんなんだって葛藤はありますね。

私の活動って、いままでどんななのか喋ってこなかったので、「何もやってないでしょ」とか、「遊んでるでしょ?」って言われるんですけど。





じゃあ彼女は一体何をしているのか?


ドガメTVでレトロゲームやソーシャルゲームをやっているだけ?
『ウメハラが倒せない』を歌ってバンド活動しているだけ?
ただ遊んでいるだけ?



それは違う。



今から五年前のこと。

ウメハラは第一人者になって、プロの道を歩み始めていた。
開拓者の姿を見たももちはその頃、「プロになれるならなりたい」と言っていた。
傍にいたチョコブランカは、なんとか彼をプロゲーマーにさせたいと考えた。

チョコブランカ自身は、プロになろうと考えなかった。
なれるとも思っていなかったらしい。



だからチョコブランカは営業を始めた。
自動車のディーラーとしてじゃなく、ももちのマネージャーとして。


チョコブランカ
プロとして雇ってくれと、いろんな会社に営業しました。
基本的に海外のメーカーさんに。
「ももちをプロとして雇ってくれないか?」
そんな感じで回ってました。

二つ目に、英語でブログを作ったり、Facebookを開設して、海外に向けて自分の情報を発信しました。
日本に比べるとアメリカはプロゲーマーが出来ていたので、やっぱり海外かなって思って、海外の方に情報を発信しておりました。

ちなみに私は英語がすごく苦手です。
海外ドラマとか洋楽は好きだったので、それを使ってなんとか頑張ってます。





ももちが実績を作り、チョコブランカが広報を務める。

そして2011年に、ももチョコは転機を迎える。
Facebookに、Evil Geniusのオーナーからメッセージが届く。
文面は「プロにならないか」。

チョコブランカの営業がついに実った瞬間だった。
しかも、プロに誘われたのはEvil Geniusだけじゃなかった。




チョコブランカ
ちなみに、EGから話が来る前に、何社かからオファーがあったんですよ。
あったんですけど、各社いろいろ条件があるんですよ。
渡航費が出ないとか、給料が出ないとか。
何も出ないけど、名前だけプロみたいな所もあって。




どのオファーを断って、どれを受け入れるのか。
その取捨選択も、チョコブランカがさばいていた。




さて、講義でチョコブランカが語った仕事内容について。
例えば、YouTubeの『Momochi & ChocoBlanka TV』にアップロードしている動画は、チョコブランカが編集している。


ニコニコ生放送『ももチョコチャンネル( *`ω´) (´皿`*)』での配信はもちろん、テレビ番組への露出も彼女はこなす。
先日は、日本テレビの『ズームイン!!サタデー』にプロ格闘ゲーマーカップルとして出演していた。


つまり広告塔だ。
彼女は自分の役割を自覚している様に見えた。


「チョコブランカ:営業+広報」というプレゼン資料には、その意思が垣間見えた。
プロゲーマー・チョコは、営業であり広報であり、ももちのマネージャーなのだと。





特別講義が終わりに差し掛かろうとした際、チョコさんと話せる機会が生まれた。
何を喋ろうか少し考えて、私は「スタンフェストのももちさん凄かったです!」と伝えた。
今日の講義を聞いて、そう言うのが一番だと思った。

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