Good Gameと言う間もなく、すでに試合が終わっている 友吉『Good Game』
自分が投稿したAmazonレビューより転載。
主人公の高橋大吾と、日本王者の姫野エレナの表情がとても良い。
ゲームをプレイ中、全く笑っていないから。
「日本初のeスポーツ漫画」に相応しい、挑戦的な表情です。
e-Sportsとは何でしょうか?
ゲーム中に、和やかな笑顔を見せないのがe-Sportsです。
ゲームが描かれる時、大抵は和気藹々とした空気とセットで、ビデオゲームは登場する。
けれど本作品では、真剣な面持ちで大会に臨み、汗をかき思いつめた表情でゲームに励む姫野エレナの姿が描かれている。
連載が始まった平成21年においては、随分と挑戦的なキャラクターです。
物語はe-Sports大会の予
選会場から始動し、プロゲーマーの存在が明らかになり、RTSの『ファンタジークラフト』に高橋大吾が出会う。
第1話から未知の世界が広がっていく感じで、期待感が増していく。
しかしながら、肝心な所が惜しい。
対戦ゲームの描写、e-Sportsの試合風景が物足りないのです。
高橋大吾は努力せずにゲームをやりこなす天才で、初見の『ファンタジークラフト』の最高難易度を一回でクリアするほど。
ですが、最高難度の「ナイトメア」がどれくらい厳しいのか、どのようにしてクリアしたのかが、結果で語られる。
対戦中の姿を背後から眺めた姫野エレナが、「その難易度に初プレイでしかもこんな短時間で……!?」と驚愕する。
プロゲーマーのミハエルも「なんてゲームセンスだ……」と驚くんですが、試合内容が飛ばされてるので、いまいち主人公の天才性が伝わってきません。
RTS(リアルタイムストラテジー)がどんな競技なのかも、ゲーム内容なしでわかってもらうのは困難だと思います。
一応、「要は自分のユニット増やして相手を全滅させれば勝ちってことだろ」という台詞と共に、ゲームの一画面は描かれている。
そして主人公は「なるほどな……だいたいわかってきたぜ」とシステムを把握し始めますが、RTS未経験の読者にも果たして伝わるのでしょうか。
筆者の友吉による「eスポQ&A」では、RTSがどんな競技なのか文章でちゃんと説明されている。
そのQ&Aで解説されてる内容を、漫画にもう少し反映させて欲しかったです。
作者インタビューにて、「e-Sportsを知らない人向けに描いたので、熟知してる人にとっては突っ込み所があるかも」といった話がありました。
確かに、RTSなのに自軍ユニットを高速で動かして攻撃をよけたり、e-Sportsの特訓が筋肉トレーニングとランニングが多くを占めたりと、「ん?」となる点はあります。(プロゲーマーのときどさんはジム通いをしていますが、目的は精神を鍛える所にある)
ただ、e-Sportsの入門にしても、もっと詳しく描写した方がむしろイメージしやすいと思いました。
第2話は第1話よりもRTSの説明が詳しいけれど、対戦内容よりもマウスを動かす人物の方が多くコマに出るので、試合状況を把握するのは難しい。
でも、登場人物の本気と熱さは伝わってきます。
初めは傲慢で自惚れの強く、真剣さが見られなかった高橋大吾が、「遊びじゃねえよ! 全身全霊かけてみんなマジでやってんだ!」と奮起するまでに成長する。
自尊心のためと言うより、姫野エレナのために。
必死でゲームに注力するプレイヤーの姿を、ただただ真っ直ぐに描いた本作は、正に「日本初のeスポーツ漫画」でした。