演劇2015年03月28日配信

舞台『TOKYOHEAD』へ行った。バーチャファイター勢はあまりに熱かった

数ヶ月前、東京の名物ゲームセンター、高田馬場ゲーセン・ミカドへ初めて足を運んだ時のこと。
店内の壁に、一枚のチラシが貼ってあった。
チラシには、大塚ギチ氏の作品が演劇になると書いてある。

大塚ギチ氏のことは、Yahoo!ニュース個人で初めて知って(ゲーセン喫煙問題とか、ミカドのエアガイツ仮面とかの記事)、気になっている人だった。

その大塚ギチ氏が原作で、しかも演劇の内容は「ゲームセンターコメディ」だ!
これは行くしかない、と思った。行かなければならない。
JAEPO2015へ行った時も、トウキョウヘッドのチラシが目に入った。
チラシで期待を膨らませていくってのも、昔のゲーセン的だろうか。

舞台は1994年のバーチャファイターシーン。
ゲームを、一つの作品としてではなく、プレイヤーを追うことで享受している私にとって、これ以上ない程に胸躍るテーマだった。

千秋楽、つまり舞台の最終公演日に、私は新大久保駅を降りて百人町に着いた。
そして劇場の東京グローブ座へ。

東京グローブ座

チケットは2階の一番端の席。
個人的に、端の席は当たりだった。
筐体と演者達を、いい具合に俯瞰できる位置なんで。


そう、筐体! アーケードゲームの筐体が、演劇の舞台に置かれているんです。
初代バーチャファイターと、バーチャファイター2の筐体が!
筐体がどんな使われ方をするのか、ワクワクした。

バーチャファイターの筐体が四台ある上に、セブンティーンアイスの販売機まであるんですよ、舞台の上に。
このような舞台装置、演劇で前例があるんだろうか?
だって、キャストが実際にバーチャを舞台でプレイして、その試合内容がストーリーに関わってくるんですよ。リアルタイムで。
演技力だけでなくバーチャの実力も必要な舞台!


…………。
03月23日13時00分、トウキョウヘッドが開演した。
徐々に暗くなる場内。
劇場がゲームセンター特有の薄暗さになった後、これまたゲーセン特有の賑やかな雑音が聞こえてくる。

そしたら、いきなりリアルファイトがスタート。
バーチャファイターをプレイする二人からトウキョウヘッドは始まるんだけれど、ゲーム内で何があったのか、掴み合いのバトルが発生。
店員が止めに入り、何事もなかった様にバーチャファイターを再開する二人……あぁ! 本当にゲーセンコメディが始まるんだな! と実感した。


さて、印象に残ったシーン。
話のメインはバーチャ鉄人です。
新宿ジャッキー、池袋サラ、ブンブン丸……。

鉄人が強烈な印象を与える中、私はゲーセンの店員(酒井善史)が印象に残った。
トウキョウヘッドは「GAME SPOT21」で繰り広げられる。
ゲームスポット21の店員が、なんと表現したらいいんだろう、いい味をしているのだ。

物語序盤で、ゲームライター志望のオオツカは、スポット21の常連にバーチャの魅力を教えてもらう。
「バーチャは"重さ"よ!」「筐体から龍が上るんだよ!」などと語る常連に続いて、店員までも「バーチャファイターとは……」と語り出すの。
コンパネやレバーをメンテしてくれる店員さん……だけに収まらず、自らバーチャファイターに耽溺し、その魅力を教えてくれる店員。最高だ。


あと面白かったのが、バーチャファイターの大会を告知するシーン。
店員が大会用ポスターを店内に貼ろうとすると、常連から「もっとお祭り感出して貼れや!」と要求される。
何が面白いって、そんな無茶ぶりにきちんと対応して、店員が「ハイッ! ハイッ! ハイハイハイ!」とかなんとか威勢のいい声をあげながら、体をユッサユッサ揺らしてポスターを店内に貼ってくれる。サービス精神の塊……文字じゃその様子を伝えられない! トウキョウヘッド映像化希望!


他にも、店員のセリフで笑ったのが、「新宿史観が気に入らなかったんじゃないですか?」ってやつ。
どんなシチュエーションかというと、「バーチャファイターは新宿勢がトップに立っている」てな見方が強まるバーチャ界隈に対し、町田勢が腹を立てているシーン。

町田勢が新宿勢を敵視している様子を見て、店員が発した一言が、「新宿史観が気に入らなかったんじゃないですか?」。
新宿のスポット21を中心に書く記事が、気に入らねぇ! と
"新宿史観"って単語がおもしろい。
バーチャファイターは地域毎のコミュニティが熱いんだなぁ。


さて、トウキョウヘッドの感想を一言でまとめるなら。
バーチャファイターが初めて世に出た時、みんな口を揃えてこう形容したらしい。
「まるで本当の人間のように戦っている」と。ありきたりな表現で。
トウキョウヘッドへの感想も、同じだ。

舞台に没入していた110分間、まるで本当に90年代のゲームセンターにいるような感じだった。

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