古き良き"暗さ"が、全編にわたって流れている 西出ケンゴロー『ウメハラ FIGHTING GAMERS!』
自分が投稿したAmazonレビューから転載。薄暗い店内、筐体を蹴るプレイヤー、灰皿に盛られた五十円玉……舞台の大半はゲームセンターで、他の場面も仲間内での交流が主。
閉鎖的と感じるかもしれない。
でもどこか居心地が良く、熱かった時代(今も熱い)を再体験できる漫画です。
途中、大貫晋也(主人公)の友人であるツトムが、父親に叱咤されるシーンがある。
あとがきで、打ち合わせ中のウメハラが「ツトムの親父をもっとエグくしよう」という案を出している。
確かにあのシーンはエグかった。
だって、醜い大人の姿がストレートに表現されてるんですから。
ゲームをこっ酷く罵った後、父親が掛けた言葉は「俺に恥をかかすなよ」。
人からどう見られるか? だけを考えてる姿と、目の前の勝負だけを見据えた少年との対比が、何ともエグい。
ただ、周りからの目線を気にするのはツトムの父親だけではありません。
本作の中心人物である大貫晋也の周りには、常に人がいる。
周りの人もゲーセンに来るし、大貫が勝ち続ける様子を目にして「相変わらずつえーな」とも言う。
でも、いざ大貫が真面目に、真剣に格ゲーを練習し始めると、「なんかダサくね?」といった反応。
遊びでセンスを見せつければ格好良いけど、本気でやり込むのは格好悪いという空気。
そんな微妙な空気が漂う昔のゲームセンターで、我が道を行く二人の少年が、本作の魅力です。
ちなみに、ツトムは実在する人物ではないとのこと。
今年一月のイベント「四国殲滅100人組手」にて、人間の弱い部分を集めたのがツトムなんだ、という話がありました。
ウメハラさんによると「当時ゲーセンにいた人達を全部混ぜて、人数分で割ったらツトムになった」。
本書の名シーンはStage6(P.116)の、ビシャモン同キャラ対決で、大貫がウメハラに勝利した瞬間だと思います。
作中のウメハラは一言も喋らない。
筐体の画面を視界に入れてるものの、一体どこに焦点を合わせているのか掴み取れない。
まさしく天才の雰囲気を醸し出しています。
そのウメハラが、このシーンでは明らかに、大貫晋也を見据えている。
すまし顔ガイルと言われたウメハラが、初めて別の表情を見せる印象的な場面でした。
一つ気になる点が。
所々で、何が起きているのか伝わり辛いコマがあり、例えば番外編のゲーメスト杯。
話のオチとなる「鬼首捻りで相手を掴む」「ビシャモン使いのえげつない連打」のページは、見開き2ページです。
その見開きページは、人物が右に90度回転して描かれている他、どんな動作をしているのか一瞬で判別しにくい印象を受けました。(TOPANGA TVの第153回にて、ウメハラさんが直々に本エピソードを語ったので、そちらのトークを聞いてからの方が楽しめるかと)
自分がヴァンパイアハンターを未プレイだったのも、作中の動きを読み取りにくい原因でした。
なので『ヴァンパイア リザレクション』を買いました。
そういえば、NESiCAxLiveにも、セイヴァーとZERO3が配信されてますよね。
つまり、ゲームセンターへ行こう。