ウメハラ2015年03月29日配信

加工されていない生の思考 梅原大吾『ウメハラコラム 拳の巻』



波動拳ってどう使うんですか? キャラ対策はどうやるんですか?
……といった基礎的なことを、上級者に聞くのはもったいないと思ってた。
検索すれば解決しそうなことですし。
実際、ボタンの押し方を読者から尋ねられたウメハラさんは、「しかしこんなことを俺に聞くかね?」と返答。

でも、しっかり質問に回答してくれています。検索では得られない本人独自の言葉で。
例えば、セットプレイや飛び道具。
格闘ゲームの一要素を出発点に、「対戦ゲームの醍醐味は主張のぶつけ合い」「北海道に住むならまず防寒具を買え(キャラ対の話)」など、格ゲーを上からガッと掴むような感じで話を広げている。

いちいち例え話が面白い。そして的確。
質問がシンプルでも、上級者の目を通せば、予想だにしない深遠な答えが返ってくるんだな、と思った。


ところで、ゲームをプレイする時、普通は何に期待するだろうか? グラフィック? ストーリー?
ウメハラさんは、ひたすら人(プレイヤー)に注目している。

試合中に相手の動きを見るって話ではなく、格闘ゲームでも麻雀でも、プレイヤーと競うこと自体に惹きつけられているんだなと。
対戦ゲーム(競技)だから当たり前とは言え、人対策や読み合いの話題でも、一貫して対戦相手を重んじる姿勢が、コラムからひしひしと伝わってくる。


本書からもう一つ感じ取ったのは、ウメハラさんはニュートラルだということ。
ウメハラさんがラジオ『すっぴん!』に出演した際、「一つの趣味、一つの競技、一つの仕事として普通に扱われれば良い」との思いで、番組の最後を締めていた。特別扱いは別にいい、と。

コラムの「ウメハラの日常」でもこう語っている。
「必要以上に格ゲーの魅力を煽って、一過性のブームを作って欲しくない」と。

少年期の万能感はどこ吹く風で、彼はただただ求道的です。
その物腰に畏敬の念を抱きつつ、しかしそれでも今は、一視聴者として「プロゲーマーって凄いんだぜ」と喧伝していきたい。


それにしても……この本は食べるのに苦労します。
格闘ゲームから導かれた考え方を、一般化して読みやすくしたのが『勝ち続ける意志力』ですが、このコラムは素材がゴロっと直に載ってる。

だからこそ、梅原大吾氏の思想をストレートに味わえます。
一年以上読んでますが、まだまだ読了できません、このコラム。

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