書籍2014年08月19日配信

読んだ後に火を移してもらえる本 ときど『東大卒プロゲーマー』

自分が投稿したAmazonのカスタマーレビューを転載。


案外お調子者で、懲りない方なんだなぁ。
そんな印象を、繰り返し語られる「有頂天になっては痛い目を見る」エピソードから受けました。
同時に、ときど氏のポテンシャルの高さも思い知った。


「ゲームのために頑張って麻布中学に合格」「初めての世界大会、カプエス2で優勝」「80点まではパパッと行ける」等がさらっと書かれてる。


結果を出すまでの試行錯誤も書かれているけど、調子に乗った失敗談が何度も何度も出るのに対し、成功談は簡潔にして、過程で得た教訓に分量を割いていて、なんだかすごい。



小学一年生の時に『ストリートファイターII』に出会う地点から、ときど氏の自伝は始まります。
小学生から現在に至るまで、共に歩んで来た格闘ゲームでの体験をベースに、彼の哲学と格ゲー論が挟まれた構成。

動画配信がゲームに与える効果や、格ゲーの主な大会が紹介されており、
「今、対戦ゲームはどうなってるのか」を把握できる内容です。



終章では、格ゲーが「いい人だけが勝てる世界」と評されています。
実力と勝敗が全てではなく、観客を楽しませるプレイや礼儀が大切なのだと。
一人で練習するより、仲間を作る方が上達するのだと。


でも、人望がなかろうと性格が悪かろうと、技術さえ高けりゃ認めてやる! って所が対戦ゲームの良さであると個人的に思っているので、「キャラの後決めや、手段を選ばない勝ちたがりを続ければ相手にされなくなる」「仲間と競い合う奴は一匹狼より強い」との結論は、優しくも厳しいな、と。


ときど氏が麻布学園の講演にて「ゲームする自由を獲得するには、責任を果たさなければいけない」と学業の大切さを説いた瞬間に、会場の保護者から拍手が起こった時も、似たようなことを感じた。
優しいメッセージを発する方だな……と。



さて、この本で特に面白かったのは第4章の「プロゲーマーになった後の生々しい話」ですね。

プロへの道が一通のメールから突然開かれたってのがなんとも。(ときど氏は迷惑メールかと思ったそうだ)
アパレル会社がスポンサーになったものの、交通費と経費以外は賞金で稼がなければならない!


しかも「これ自分で売ってね」と会社からTシャツを渡され、全部自力で売り切ったらしい。
以降も、複数のスポンサーと契約する困難さを知りながら、ときど氏が次々に営業をかけていく様が公開されてて、楽しく読んだ。

いや、とても大変そうなんですが、プロゲーマー黎明期を全力で走る人の話は、滅多に聞けないので。



今はプロゲーマーの活動に専念するのが第一だが、組織運営や業界に貢献する方法を考えることも、ときど氏は興味があると言う。

次はより詳しい話を、本の中にちらっと出た「業界全体の拡大を推進できる仕組みづくり」の話を読みたいですね。
ときどと谷口一が組めば、火力がもの凄いことになるでしょうから。



このエントリーをはてなブックマークに追加