ライトノベル2014年04月18日配信

そんなに気持ち悪いのかなぁ、羽川翼

親ではない親を。
娘を殴るような親を――庇おうとしている。
そんな羽川が。
僕は友人として――素直に気持ち悪かった。

(西尾維新 『猫物語 (黒)』 講談社BOX)


「父親から理不尽に殴られても悲鳴さえあげず、ただただうずくまっていた委員長ちゃんが、次に取った行動は、どういうものだったと思う?」
「『駄目だよ、お父さん』」
忍野は言った。
似もしないのに――羽川の口調を真似て。
「『女の子の顔を殴ったりしたら――』。
委員長ちゃんは、にっこり微笑んで、そう言ったそうだ」
「…………っ!」
聞くに堪えない言葉だ。
それが。
それが父親に殴られた娘の言葉かよ!
そんなものが!


羽川翼は作品内でこう語られる。
品行方正の優等生、完璧超人、歴史上に登場する聖母の様。
正しすぎて強すぎる。
そこが怖くて気持ち悪いって。


で、思ったんですけど、
正義感の強い人物にネガティブな感想を持つのは珍しいんじゃないかなーと。


アニメ版を視聴した際は「僕は友人として――」の後に
「不憫でならなかった」とか「立派に思えた」とか続くような感じ、演出に見えたんですよ。
だから「気持ち悪い」と主人公が続けたのは意外だったんだよね。


物語の中で、いかに羽川翼が気持ち悪いかが解説されると、
コメントでも「気持ち悪いな」「怖いなこの子」との反応がたくさん出てた。


でもなあ、表面だけ読み取れば「高い倫理観を持ついい子」と受け止めそうだけどね。

作中で繰り返し羽川の異常性が強調されるもんだから、
アニメ視聴者は物語をより楽しむために(理解するために)、
「この子は気持ち悪いんだ」と思い込もうとしてるんじゃないかな~。演出の妙というか。


西尾維新の描写から、気持ち悪さを感じ取ったのではなく、
西尾維新の描写を読み取ったことにしたいから
羽川を気持ち悪いと思う。思い込む必要がある。


なんか、推察じゃなくて邪推みたいになってるかも。



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